リーフィのとある一日-4

　 　
　　＊歩行者：ゼダ

　今日はやけに暑い日だった。
　こんな日に、好き好んで街をぶらつく俺も何の因果があるのだろうと思いながら、それでも、なんとなく俺は街に出ていた。取り立てて目的もないし、あてもない。夜の街なら、それでもなじみの女の所に挨拶にいくこともいいのだが、こんな昼間、しかも、こんな暑い日に、そういう気分でもなかった。
　しかし、俺は俺でこうして昼間の街を出歩くのも嫌いじゃない。時にはのどかで何もなさそうな気配の街だっていいじゃねえか。それに、こうして一人で行動するのが時々俺は好きだった。
　とはいえ、俺がこうして一人で出かけると、ザフの奴が酷くうるさい。
　ザフは、俺の家の使用人の息子で、俺とは兄弟のように育ったものだが、あいつときたら忠誠心が厚いのは結構なことなのだが、いちいち危ないことはするなだとか口うるさくって困る。
　そういうわけで、今日もあいつの目をかいくぐってこっそり抜け出してきたわけだ。あいつと一緒にあるくと、好きなところにふらふらと舞い込めないからな。
　そうそう、最近、俺が例の三白眼にちょっかいを出したりすると、あいつときたら凄くうるさい。あの三白眼だって、どうせろくでもねえ奴にきまっているのは間違いないんだが、だから何か厄介ごとに巻き込まれるんじゃないかといってくるんだが……。俺としては、その厄介ごとを含めて楽しいと思っているのだから、いいじゃねえかと思う。
　それに、俺はあの三白眼は嫌いじゃない。奴は俺のことが嫌いみたいだが、そういうところを含めてからかうとすごく面白い。特に、女にもてないことに対して、なにやら気にしているみたいだから、そういうのをつついてやると本当に面白いんだ。もっとも、そういうことをするから、あいつは俺のことが嫌いなんだろうがな。
　あいつだって裏表のある男だし、そういう意味でも、俺と奴とはちょっと似たところがあると思うんだが、どうだろうね。同属嫌悪も入っているのかもしれないな。
　そんなことを考えながら、暑いからどこかにはいって茶でも飲もうと思ったときだった。ちょうどいい具合に、先ほど話題に出たヤロウが道端にいるじゃねえか。
　しかも、小さな女の子を前に、なにやらあたふたしてやがる。
　その隣に無表情にその様子を眺めているリーフィがいるんだが、これもなかなかなんともいえない光景だな。リーフィは、とんでもなく美人だし、性格もふくめてとてもいい女なんだが、無表情でどこかずれているところがあって、それはそれで隣で見ている分には興味深い。
　そんないかにも面白そうな二人がいるんだ。俺が、ちょっかいをかけねえ手はねえだろう。
　にしても、女の子を前に、いかにも不審人物ですと言わんばかりの話しかけ方をしている三白眼もどうかだが、隣で傍観しているリーフィもリーフィだよな。きっと、上手くいかねえのが、三白眼の話しっぷりが微妙だからだってわかっているだろうに、どうして助言してやらねえのかねえ。
　別に悪気があるわけではなさそうだし、タイミングを見失っているのか、それとも、観察に熱心になって突っ込んでやらないのか、どちらかだろうか。
　なんにせよ、傍から見ている分には、おもしれえには違いねえんだけどもな。