辺境遊戯・幻想の冒険者達/©渡来亜輝彦2003

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第一章:旅の始まり
 第三話:王国騎士団


 ふっと、空の明るさが落ちた。また、日蝕だろうか。辺境を出て街道筋を、大量の荷物を持ったまま進んでいた二人は、おのおの空を見上げた。彼らが知り合ってから、もう三日ほど過ぎていた。この奇妙な二人連れは、相変わらず、ふらふらと行商の旅をしていた。
「おい、見ろよ。まただぜ。お天道様もよくあきねえよなぁ」
 レックハルドがおもしろそうに言った。日蝕がどうのこうのということに、レックハルド自身はあまり危機感を持っていないらしい。
 迷信深くもなければ、信仰心もない。頼れるのは自分だけ。それが、レックハルドのスタンスだ。目で見えない不確かな物は、あまり信じない。この日蝕にも、なにかしらの理由があるに違いないと、思っていた。
「このまんま、日蝕が続けばお日様がなくなっちまって、いつか世界は真っ暗闇になるんだってよ。このまえ、どっかの偉い坊主が言ってやがった。なぁ、どう思う?ファルケン。世界が闇になったら、やっぱり、ランプとかたいまつとかが馬鹿売れするんだろうな?いまから、投資しとくってのも手かもなぁ」
レックハルドは、楽しげに喋り続けていたが、相づちをうつ声すらないので、またどこか行ってしまったのかと思い、ファルケンのいた方に目を向ける。ファルケンは、予告無しにふらっとどこかに消えてしまうので、目をはなすとすぐにはぐれてしまうのだ。
 しかし、珍しく今回は、どこかに行ったかも知れないとおもったファルケンは、先程のいた場所から一歩も動いていなかった。ただ、太陽の方を仰ぎ見ている。
「なんだ?いるじゃねえか」
レックハルドは変な顔をして、ファルケンの方に歩み寄った。ファルケンは、まるで取り憑かれたように欠けゆく太陽に見入っていたのであった。どちらかというと、注意力散漫な彼が、何か一つの物をじっと見ている姿をレックハルドは見たことがなかった。
「どうした?まさかとは思うけど、気分とか悪いのか?」
 あり得ないことだと思いながら、彼は尋ねた。 
「そうじゃねえけど……」
ファルケンは、上を見上げたまま、首を横に振った。
「やっぱり、変だ……。辺境で何か……」
「え?辺境?」
 ファルケンは、妙に真剣な顔をしていた。
「なんだ?なんか心配事でもあんのか?」
レックハルドは、さすがに少し心配になって尋ねた。真剣な顔のファルケンというのも余り見たことがないのである。
「……まだオレにはわかんないけど……、確実に何か起こって/ると思うんだ」
「何か?」
 ファルケンは、ようやくレックハルドの方に視線を戻して歩き始めた。
「何か起こってるか……。たしかに、ここの天気は異常だと思うけどよ」
レックハルドは、そう話しかけた。
「気にするほどでもねえんじゃないかな?」
「そうだといいけどなぁ」
 心配そうなファルケンを見て、レックハルドは明るく言った。
「ま!大丈夫だって!それよりも、今日も売って売って売りまくるんだ!そういうことは、おえらいさんがやってくれるってさ!そのために、王とか貴族を食わしてんだからよ」
 王や貴族を普段馬鹿にしているくせに、レックハルドはいざというときはこんなことをぬけぬけというのだった。だが、レックハルドのような一商人に、世界の異変などという一大事は、関わるにはあまりにも大きすぎる話ではあったのであるが……。
「そうかぁ。そう言う人が、守ってくれるんだな。じゃ、安心だ」
「まぁな。たっかい税金納めてるのは、いざっつー時の為の保険のようなもんだからよ。そうか、お前、そういうのも知らないんだな。全く、世間知らずだよな」
偉そうに言うが、レックハルドは関所を渡るとき位しか、税金など払ったことがない。その話で、不意に思い出したのか、彼はファルケンの方を向いた。
「そうそう。今日は、クレティアの方に出向いてみようと思うんだぜ?で、お前はどう思う?」
「クレティアって?クレティア大橋のある町のことか?」
「そうだ。あそこにでかい関所があるよなぁ。通行料とられるのは癪だが、あそこは、人がいっぱい集まるし、品物もいろいろ集まるんだってよ。オレは行ったことはないけど、お前は行ったことあるんだろ?」
 レックハルドの問いにファルケンは、いつものようににこにこしながらうなずいた。
「あるよ〜。何度も」
「で、実際のところ、クレティアはどういう町なんだ?ホントに栄えてんのか?」
 行って閑古鳥が鳴いていたら、旅費の無駄だ。とレックハルドは思っている。確かな情報をつかむのも、商売にはとても大切な事なのだ。
「ああ。人がいっぱいいるよ〜」
「もっと具体的に教えて欲しいんだがなぁ」
 ファルケンの余りにも普通のこたえに、短気なレックハルドは、少しいらだつ。できれば、要所だけを具体的に教えて欲しいのだが、ただでさえ、話し下手なファルケンにそれを望むのは、無理である。
「具体的にか〜?そうだな。あ!そうそう、あそこには、船が着くんだ。大きな川が流れてて、その上に橋が架かってて。川岸には、船がつくし、向かいの町からもたくさんの人がやってきて、物があふれかえってた。うん。そうだったよ」
「なるほどなるほど。きけばきくほど良さそうな町だな。じゃあ、今回はそっちに向かおう。……ちょうど、話してる間にお日様も戻ってきたしな」
 レックハルドは、ちらりと上空を見上げた。徐々に明るさが戻ってきている。
「そうだなっ」
ファルケンはそう応じたが、彼の顔に現れたかげりは、まだ彼の表情に深く残っていた。前を進もうとしているレックハルドは、まだそれに気づいていないようだった。

 
 街道を歩くのは暇だが、辺境を歩くと忙しない。いつ何に襲われるかわからないので気が抜けない。クレティアへの道は、辺境を介さない方がずっと早くつく。ファルケンも、無理に辺境に入ろうとは言わなかった。
 退屈しのぎにとレックハルドは、無駄話をファルケンにしてやりながら、ぶらぶらと歩く。荷物の大半をファルケンに持たせてはいるが、持てるだけ持つ主義の彼は、自分もしっかり荷物を背負っている。振り返るのが一苦労だったのでレックハルドは、話をファルケンに振っても滅多に振り返らない。
「で、つまり、こうするとかなりお得なわけよ」
「へえ。すごいな。レックは!」
 どうやら、商売のコツを長々と語っていたらしい。商人になって日の浅いレックハルドの生意気な講釈だが、それでもファルケンは、尊敬のまなざしを向ける。
「そーだ。もっと、尊敬しろ」
 少し調子に乗って、レックハルドはそう言って笑う。
「お前は、ちょっと要領が悪いんだよな。もっと、要領よくねえと損するぞ。損」
「うん、わかった。なんかすっごい勉強になったような気がする!」
 はっはっは。とレックハルドは、調子に乗って上機嫌に笑った。ファルケンもファルケンで、すごく勉強した気分になっており、やはりにこにこしている。
「ん?」
 前方の遠くに砂煙が経っているように見えた。レックハルドは、目を凝らし、遠くをうかがった。街道の向こうに何かいる。
「おいおい、ファルケン」
ファルケンは、マントを引っ張られて軽くバランスをくずす。
「何だよ?」
「お前、目ェよかったよな?……あれは何だ?」
「え、えーっとっ」
 レックハルドに言われて、ファルケンは遠く前方に目を凝らした。砂っぽい街道の向こうに、確かに何かがいるようだ。しかし、ファルケンでも余り気がつかないぐらい遠いので、それに気がついたレックハルドも相当視力が良かった。ファルケンは、少し尊敬のまなざしをレックハルドに向ける。
「すごいなー。レックってすっごく目がいいんだな。そんなに目のいい奴とは初めてあったな〜」
「そんな所に感心はいらねえから。で、あれはなんだ!?」
せかされて、ファルケンは伸び上がった。ただでさえ、大きい彼が伸び上がるともっと大きく見えた。
「えーとなー、あれは馬と人だよ。人が馬に乗ってるんだ」
「複数か?」
「うん」
「武装はしてるか?」
「うん。鎧着てるよ。剣も槍も持ってるし」
「旗は?」
「ある。紅い旗だな」
 話を聞きながら、レックハルドは順々に想像していった。複数の人が馬に乗っている姿が思い起こされ、それが鎧を着て、そして剣と槍をもっている。それでもって紅い旗。
(待てよ待てよ。)
 レックハルドはあわてる。
 これは、普通に兵士の姿だ。レックハルドは、反射的に怒鳴りつけた。
「馬鹿野郎!オレに誘導尋問させてないで、とっとと兵士っていえよ!見てすぐにそんくらいわかってたんだろがっ!」
「だって、別に危ない事じゃないから、ゆっくりでもいいかなって」
「つ、捕まえにきたらどうするんだよっ!」
 レックハルドは、周りを見回し、逃げ場所がないかどうか探している。ファルケンは、ぎょっとしたらしく、少しあわてた口調でレックハルドにたずねた。
「え?オレを捕まえに」
「お前がどうしてつかまるんだよ?ろくに悪い事してないんだろ?捕まってやばいのは、オレなの!」
 借金の利子を力ずくで帳消しにもしたし、おまけに今まで重ねたせこい罪は数知れない。あんなせこい罪で捕まったりしないだろう、とは思うが、ちりも積もれば山となる。万一ということもあるのだ。
「でも、まともな商売してるんだろ?」
「少なくとも詐欺はしてねえよ。商売は信用が基本だからな。今はスリもやめたし、なにもしてねえよ。オレは商人なんだから!」
 いっぱしの口をききながら、それでもレックハルドは、落ち着かない。
「じゃあ、昔のことでなんか捕まったりすることないだろ?」
「あまい!この世には時効ってのがあるけどな!オレは、足洗って、まだ月日が浅いんだ。今なら、昔の罪でも十分すぎるほどしょっぴける!」
 身に覚えが有りすぎるのだった。
「じゃ、どっか隠れた方がいいのか?」
「そりゃそうだが……。いや、でもここから逃げたら余計怪しまれるしな」
 腕組みをして、首をひねって考える。冷静なレックハルドは、顔を伏せてやり過ごそうと思いついた。もし、連中が彼を捕まえに来たのでなかったら、下手に行動を起こすことはやぶ蛇になりかねない。
「静かにして、通り過ぎるのを待つか」
「わかった〜」
 ファルケンは、緊迫感のない声で返事をした。
 騎馬兵たちはどんどん近づいてくる。レックハルドは、顔を伏せ気味にして進みながらも、ちゃっかり彼らの様子をうかがっていた。紅い旗にグリフォンの紋章が見えた。よく見ると、馬に乗っている人間の鎧も剣も槍も、かなり立派なものである。
(…ただの兵士じゃねえ。こいつらは、カルヴァネス王国騎士団じゃないか!)
 レックハルドは、顔を伏せるのをやめた。まさか、王国騎士団のような連中が、自分を追ってくるわけがない。
「ファルケン、喜べ。オレたちは大丈夫だ」
 小声で後ろのファルケンに告げると、ファルケンはにこっとわらった。
「そっか。それはよかった」
 馬蹄の音が近づいてくる。
「ほら。何ぼーっとしてんだよ?ひかれるぞ」
レックハルドは、ファルケンの袖を引っ張った。道の隅によけろということだ。ファルケンは、気遣いは無用だと言いたげにこういった。
「オレ、ぼーっとしてないよ。わかってたし」
「そう言ってる間に跳ね飛ばされたりするんだよ」
 ざっと騎馬の一団は、やってきた。まるで強い紅い風が吹き抜けるように、それはものすごい速さで目の前を駆け抜けていく。彼らは、当然、道のそばの行商人らしい旅人には目もくれなかった。あっという間に、彼らは去ってしまった。
 レックハルドがざっと数えた感じでは、二十騎ほどいたようである。クレティアから王都にでも帰るのか、それとも、別の任務にでも就くのだろうか。
 思いを巡らせてはみたものの、レックハルドは直接自分とは関係ないな。とわかると、急に詮索する意欲がなくなってしまった。
 ファルケンは、少し驚いたようだったが、にっと笑ってレックハルドの方をむいた。
「すごいな」
「まぁ、王国騎士団だからな。このカルヴァネスのエリート達だ。一糸乱れぬ動きってのは、ああいうことを言うんだろうな」
「へぇ」
 ファルケンは、そうこたえて続けて何かを言おうとしたが、その顔はすぐに緊張した。レックハルドも、何かの気配に気づき、進行方向を向いた。
 馬に乗った騎士が一人、そこに立っていた。
「へぇ、珍しい取り合わせだな」
 男は兜の下で、うっすらとわらっているらしかった。
「何のようですか?旦那」
 かなり言い慣れた口調で、いつものようにレックハルドは警戒の目を向けながら言った。「仲間さんは、皆行っちゃいましたよ」
「別に。…珍しい物をみたんで、ちょっと鑑賞をな?」
 レックハルドは、男の態度にむっとしていたが、それでも顔には出さずに、
「珍しい物とは、そりゃあようございましたねえ。じゃあ、わたしたちはこの辺で」
そういって、レックハルドは前に進もうとして、ファルケンに「行こうぜ」と声をかける。ファルケンは、なぜか妙に苦々しい顔をしていたが、すぐにいつもの彼の表情に戻り、こくりとうなずいた。
「道、まだ遠いもんな。急がなきゃ」
「そうそう、途中で野宿は嫌だもんなぁ」
レックハルドは少し軽い口調で言ったが、相変わらず警戒の目を向ける。レックハルドに男の言った「珍しい物」の意味はよくわからなかったが、いい気分はしない。咎められないよう「失礼しますよ」と一言言い置いて、レックハルドは男の横をすり抜けようとした。
「横につれてる男が化け物だとしってるのか?」
 不意に男が言った。
「何だと!?」
 レックハルドは反射的に鋭い目を向けた。
「どういう意味だ!?それは!」
つい、丁寧な言葉を忘れてレックハルドはかみついた。相手はうすら笑いを浮かべた。
「知らないのなら別にいいんだが」
 ファルケンは、うつむいて何かつらそうな顔をして黙っていたが、レックハルドは、全くそれには気づかず、言い返す。
「知る知らないは関係ねえ!こいつは、オレの相棒だぞ。いきなり化け物扱いするなんて、たとえ、騎士だろうが、お偉方だろうが、あんまり失礼だろ!」
「なら、どうするというんだ?」
 騎士は悠然と笑っている。レックハルドのような庶民、おまけにすねに傷をもつような庶民と、騎士は身分の差がかなりある。気づいて、レックハルドが詰まった。たとえ、武力で勝負したところで、後で厄介は背負い込むし、自分の力ではどうにもならないのだ。 歯がみして、うつむいたレックハルドの上に、ふっと黒い影が落ちた。
「な、何をする!」
 先程の騎士が、あわてた声を上げていた。彼の体が、馬から引きずりおろされて、地面にたたきつけられた後、彼の影になって見えなかったもう一人の騎士が現れた。
「一般人相手にちょっかいかけてる暇があるのか?」
 もう一人の騎士は、兜を被っていなかった。レックハルドとそう変わらない年齢で、黒髪の短髪、少々鋭い目をしていたが、それなりに二枚目ではあるようだ。
 だが、どことなく、騎士というような高貴そうな印象のない男だ。傭兵でもしていそうな、どちらかというと少し無骨な、ちょっと不良っぽい感じがした。
「ダ、ダルシュ」
 ダルシュと呼ばれた男は、冷たい視線を浴びせた。
「帰ってこのことを報告したら、あんた、ただじゃすまないぜ。それでなくっても、いろいろとやってるのを、オレは知ってるんだがな」
 騎士は、うなると立ち上がって、ダルシュの方を一度にらんだ。
「ちっ。隊長のお気に入りだと思って、偉そうにしやがって!」
「別にお気に入りってわけじゃないぜ。あんたの素行が悪いだけだろ?」
ダルシュは、冷たくそう言った。騎士は、捨てぜりふをはいていったが、すでに負け犬の遠吠えにすぎなかった。
 ダルシュは、レックハルドとファルケンの方をむいた。
「悪かったな。王国騎士団が全員あんなのだと思わないでくれよ」
「謝ってくれるならいいけど」
 レックハルドは、まだ機嫌が直っていないようだったが、ここで騎士団相手に喧嘩をふっかける気もないので、一応納得する。
「それじゃあ、急ぎなんで失礼するぜ」
ダルシュという騎士はそう丁寧でもない口調でそう言うと、手綱を引いた。ざっと砂煙があがり、彼の姿は先に行った騎士達の方へと向かってどんどん小さくなっていく。
「ちぇっ。なーんとなくいけすかねえな」
 助けてはもらったものの、どうもああいう自信満々なタイプも、また嫌いなレックハルドはぶつくさと文句を言う。それから、思い出したようにファルケンの方を向いた。レックハルドは、さっぱりとした顔をして言った。
「とんだ、災難だったな。さ!行こうぜ!急がないと、今日も日が暮れちまう。一日は二十四時間しかないんだ。時は金なりっていうだろ?」
「なぁ、レック」
 ファルケンは、珍しく自信のない顔で悄然ときいた。
「オレ、レックにいろいろ話してない事があるんだ。何も話してないのに、一緒に言っていいのか?」
 へん。とレックハルドは鼻先で笑った。
「お前、オレを食う人食い鬼だったりするか?」
 ファルケンはあわてて首を振った。
「ぜ、絶対違う!」
「だろ〜。だったら、どうでもいいや」
 レックハルドはそう言ってすでに歩き出した。
「誰にでもきかれたくねえことはあるだろ。オレだって、自慢できた身の上でもねえし。訊いて金儲けになんだったら別だが、そういう金目の話はなさそうだし。今のところ、お前はオレの味方だし、まぁ、悪い奴じゃないみたいだしな。オレに危害を加えないんだったら、べっつにお前が警官でも化け物でも気にしねえよ。今のとこ、お前がいないと、いつ借金取りに追われてもおかしくないしな」
 素っ気なくいいながら、レックハルドはすでにファルケンの五メートルほど先を歩いている。
「ホントにいいのか?」
ファルケンがあわてて走って追いついた。
「初対面で、変な奴なのはわかったしな〜。嫌だったら、最初っから逃げてたぜ」
レックハルドは、やはり淡泊に応えた、。ファルケンは、安心したような微笑みを浮かべた。
「そうか〜。やっぱり、レックはいい奴なんだな」
「こらこら、そのくらいでいい奴とかいってたら、お前一生騙され続けるぞ。しっかたねえなぁ、お前は。お前には、オレが世の効果的な渡り方について、今から講義してやろう。しっかりきいとくんだぞ」
「わかった!!しっかり勉強する!」
  まだ、レックハルドは、後ろをちょこちょこついてくる、相棒の正体すら知らない。だが、そのときのレックハルドは、日蝕の秘密同様、それを知る必要の無いことだと思っていた。だから、訊かなかったのだ。下手に事を突っつくのは、レックハルドの主義にあわない。後ろにいるのが何であれ、自分の味方である限りレックハルドは気にしない。
 まだ、日は高い。偉そうなレックハルドと、その後ろに続く大柄のファルケンの不思議な道連れは、そのままクレティアに向けて歩き出した。明日ぐらいにはつけそうだ。



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  ©akihiko wataragi