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リーフィのとある一日  

 私は路地裏の影の部分を選んで歩いていた。
 日差しが強くて、昼間は歩いているのも大変だった。それでも、日除けに頭から飾りのついたベールをかけているから今日はましかしら。
 人は私をみて、涼しげな顔で歩いているね、というわ。別に涼しいわけではないの。こんな日に外を歩くと、私も暑くてしかたがないのよ。そうはみえないだけなのかしら。 
 砂漠の街の昼は、うだるように暑くて大抵仕事にならない。そういうときに、皆は近くの喫茶や、酒場で水煙草やお茶を飲んでゆっくりとすごしたりもするの。そういう事情もあってか、この道すがら一人の人にも出会わなかった。
 どうして私が道があるいているかって? 別に仕事があるわけでも、特別な用事があるわけでもないのだけれど、そうね、これは私の好奇心の問題かしら。
 今日は外を歩きたい気分だった。外を歩いていたら、何か面白いことがあるような気がする。そんな予感がしただけのことなんだけれど。けれど、家の中で一人でじっとするのも退屈だったわ。
 レースの編み物も、編んでしまったし、繕いかけの服もできあがってしまった。お掃除も済ませてしまったし、お洗濯も終っている。本を読んだり、詩作するには、暑いお昼よ。こんな日は、一人で詰め将棋をさすのもつまらない。やっぱり外に出るほかないわ。
 そうして、私は、何か楽しいことがないかと漠然と考えながら外を歩く。そんな淡い期待を抱いて歩いていると、たいてい少しは面白いことに出会えるというものだもの。






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