「第一、いつになったらつくんですかね、軍曹殿」
「そ、それはだな。……いや、計算では半年ぐらいでつくはずなのだが、なにせ、途中で食料の調達もせねばならんから、そうしたことで色々と」
「商売をしているうちに遅くなりそうな予感ということですか」
「まあ、そういうことではある」
 苦々しい軍曹殿に、ジョシュアは無気力にため息をつく。
「まあ、仕方がないですがね。それより、今日は寒いので、何かあたたかいものが食べたいです」
「貴様、働きもしないうちに」
 軍曹殿は顔をしかめたが、少し考え直して唸った。
「まあ、確かに今日は寒いから暖かいものが食べたくはあるな。卵の入った鍋焼きうどんとかもいいな。海老のてんぷらが入っていたら、それに卵がとろとろっと絡んでいたりして。うどん自体もうまいし」
「ナベヤキウドンは知りませんが、シチューもいいですね。牛乳のきいたホワイトソースにざっくりきった野菜に、肉とか。いやでも、やはり、肉はないとだめですね、肉は」
「それは確かに同感だな。よし、いいだろう。仕事が終って金が入ったら、今日はあたたかいものでも食いにいこう」
「おお、初めて軍曹殿と意見が合いましたね」
 ジョシュアはにやりとして軍曹殿を横目に見た。
「しかし、絶対シチューのうまい店です」
「何だと、さっき、俺が鍋焼きうどんが食いたいといったのを聞いていなかったのか! 上官に少しは遠慮しろ、貴様」
「いいえ、断然シチューですよ。肉がないとだめだって軍曹殿もいったじゃないですか!」
「鶏肉の入った鍋焼きうどんならいいだろう!」
 やはり、軍曹殿とは意見が合わない。ジョシュアは軽く首を振りつつ、仕事を終ったあと、どうやってシチューの店に軍曹殿を導くかを考えるのだった。

 軍曹殿とジョシュアが基地につく頃には……、いつ基地につくかということよりも、今日の晩飯のほうが気がかりなジョシュアであった。




* 目次 * トラック給油中