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 豊穣と金星を司る女神は、娼婦達の女神でもあった。
 毎年春に行われる祭りは、そんな彼女達が主役になる。
 この国の高級娼館には、神殿娼婦の名残を残し、星の女神の神殿から巫女達が派遣されてくることになっていた。女神の乙女と呼ばれる彼女達は、春の祭りにおいて神殿までの巡礼を行う。それは、外界と隔絶された彼女達にとっても外の世界に触れ合う唯一の機会だった。

 紅楼の乙女である夕映えにつかえるシャシャは、夕映えから祭りについてくるようにいわれて喜んでいたが、紅楼には、今問題の紅楼の殿様が居座っていた。こともあろうに、夕映えは彼を護衛として指名し、祭りに連れて行こうとする。
 
 紅楼の殿様は、王族という話であった。かつては明るい青年だったらしいが、戦場で心を病み、今は酒と暴力で心を満たす暴君と化していた。夕映えは、そんな彼を何とか救ってあげようと考えているようだったが……


登場人物紹介

紅楼の殿様
妓楼「紅楼」に数ヶ月居座っている王族。年齢不詳であるが、まだかなり若い。粗暴な男で、楼閣では常に酒浸りだが、かつては明るい青年だったらしい。皮肉屋な上、自暴自棄な発言が多く、周囲を困惑させている。しかし、妓女達には思いのほか好かれているようだ。

瑠璃蜘蛛
星の女神の巫女たる乙女の一人。舞踊を得意としている。蜘蛛の名前は、機織や編み物に非常に堪能であることから。冷たい人形のような美人。乙女の中でも変り種の性格をしているらしい。

シャシャ
本編の語り手。夕映えの侍女をしている。その都合で殿様に会うことも多く、彼の粗暴さに嫌悪を抱いている。今回、夕映えの侍女として祭りに参加することになった。

夢の夕映え
通称夕映えのねえさま。星の女神の巫女たる乙女の一人。紅楼につとめており、シャシャの主人である。おっとりした優しい乙女。殿様に好意を抱いている様子。

紅果の大尽
紅楼に通っている遊び人。さる大富豪の御曹司であるらしいが、実家とは折り合いが悪いらしい。ひねくれた男だが、気前がよく、シャシャにも優しくしてくれるため、女達の評判はすこぶるいい。

蓮蝶
星の女神の巫女たる乙女の一人。妖艶な美人。





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